映画館で観た時と今ではこの作品に対する評価が違う。
素直にこれをいいと思えたのは、
きっとその時僕が一生懸命に恋をしていたからだろう。
誰かを愛するということは即ち自己愛で、激しくなればなるほどそのぶつかり合いから逃れることができないのかもしれない。
そしてそれは成熟した大人としては認めることのできないものなのかもしれない。
それでも。
それでも、恋は人を生かすもので、人を殺すもので、それだけの力を持っている。
大人になり、いろんなことが分かってゆく。
そして、無駄だと思うものを、正しくないと思うものを、その人生から少しずつ削ってゆき、残った理性で生きてゆくのは楽しいことだろうか。
物語は再会で終わり、その後について語られることはない。
その先に待っている人生が幸福なものとなったのか、それは分からない。
願望が現実に変わった後、その間を埋めることができれば、きっと彼らは幸福になれただろうと、そう想像するしかない。
今は、このよくできた物語にただただ感心する。
小説としても、映画としても、これは本当によくできた物語だと思う。