ナチスの虐殺行為、ベトナム戦争に関する映画は、できるだけ観るようにしている。
そこに人間の本質が垣間見える気がするからだ。
そういった意味では、日本が太平洋戦争において行った行為こそ、最も重要なものであると思うのだが、残念なことにそれを公正に扱った作品はなかなか見つけることができない。
本作は公開時に映画館にて。
ユダヤ人ピアニストのシュペルマンがナチスによって蒙った数々の苦難を描写している。
とても淡々と、一つ一つを大きく取り上げたり、全体として美談にしないよう、気を配って作られた作品のように思える。
その意味では、スピルバーグの「シンドラーズリスト」と対極に位置するのかもしれない。
今日この作品を観て改めて気づき思うのは、こういった残虐行為を行ったナチスの一人一人は普通の人間であり、戦時でなければ普通の生活を営んでいたこと、その中にもホーゼンフェルト大尉のように、自分のできる範囲で彼らの力になった者がいること、その彼をシュペルマンは積極的に助けようとはしなかったこと。
特にシュペルマンのホーゼンフェルトに対する関心の薄さは、意識的に描写されていたように思え、その心理の複雑さは想像をはるかに超えるものなのだろうと、実際にその立場に置かれてみなければ近づくことのできないものなのだろうと、思い知らされた。
それでも、そういったことが自分と全く違う世界のものではなく、現実に起こりうるものであり、それがゆえに近づく努力だけは怠ってはならないと改めて思うのである。
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