最近ではマイケル=ムーアの作品などを指して「ドキュメンタリー」と呼ぶ向きもあるようだが、あれは「実写入りフィクション」であって、「ドキュメンタリー」ではない。
この作品は、冒頭でも述べられているようにまさにドキュメンタリーの精神に基づいて制作されている。
「人の一生を克明に記述することはできないが、ただ、その精神において記録に忠実に描き、その人の心をうかがい知るのみである(No man’s life can be encompassed in one telling. There is no way to give each year its allotted weight, to include each event, each person who helped to shape a lifetime. What can be done is to be faithful in spirit to the record and try to find one’s way to the heart of the man….)」
一人の男とそれに共感する人々によっていかにして近代インドが作られていったかを簡潔に綴った大作。
3時間を越える作品を飽きさせずに見せるリチャード=アッテンボローにはただただ称賛あるのみである。
「非暴力による不服従」
南アフリカでその活動を開始したガンジー。
アパルトヘイトの指導者であり、28年もの間投獄されていたネルソン=マンデラ前南アフリカ大統領は、投獄前こそ急進的な武装組織を率いていたが、彼もまたガンジーに魅せられた一人だった。
黒人解放運動の指導者マーティン=ルーサー=キング牧師も、中国のチベット支配に抵抗したダライ=ラマ14世も、非暴力による不服従を唱えるガンジーに倣ったと言う。
パレスチナ問題を始めとして世界では未だに紛争が続いている。それは暴力対暴力の果てしない連鎖を生む。武力に拠らない解決の例がここにあるにも拘わらず、それを実践しようとはしない。
なぜ、人はガンジーにこれだけ惹きつけられるのか。
なぜ、彼はノーベル平和賞を5回も辞退したのか。
なぜ、彼は首相にならずにネルーにその座を譲ったのか。
そして彼は何のために人生を使ったのか。
この作品を観た人たちが今一度その答えを考えてみることで、この世の中が少しでも変わることを期待したい。
「マハトマ」とは「偉大な魂」の意。
彼はその敬称に恥じない生き方をした。
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