美しい者は生まれた時から特権を持っている。
美しくない者の中で弱い者は食われる。
強くあろうと心の底から願う者だけが生き残れる。
それは現代にも通ずる真理かもしれない。
社会の尺度はその強さの定義を変えはするが、弱者が結局食われることに変わりはない。
強さを求めるならばそこに既存の正義は必要ない。
邪魔なだけだ。
そうして強さを手に入れた者が望む社会が生まれ、それが新たな正義を作る。
歴史とはその繰り返しで、我々人間はそこから色々なことを学びながら少しずつ正義をより正義に近付けてゆくものなのだと、この作品を観る度に思う。
弱者をいたぶるのはこれもまた弱者であり、他者の非難によって自己を確立するという愚かな行為に過ぎない。
それでも、世の中がまだ豊かでない以上、そもそも飽く事を知らない人類がどこまでゆけば豊かになるのかは誰も知り得ないが、そこには弱者が必ず存在し、こういった行為が生まれる。
過去の話ではない。
今現在もアフリカ諸国、中東諸国では同様の行為が繰り返されている。
この日本においてさえ、程度や形は違えども、同様の行為は行われている。
正義と強さはほとんどの場合において両立しない。
それが両立するのは強さの結果として正義が成る場合だけだ。
だからまず、強さを手に入れることからはじめなくてはいけない。
非常に重いテーマを含んだこの作品。
スピルバーグが娯楽主義と別に取り組んだ本作とシンドラーズリストには、彼がユダヤ系というコンプレックスを払いのけるための意志が込められているように思える。
長編なので時間のある時にどうぞ。