「In This World」は、アフガニスタン難民の少年ジャマールがロンドンまで辿り着く過程を追った映画だった。
パキスタン~イラン~トルコ~イタリア~フランス~イギリス
アフガン難民には当然、パスポートやビザなどはない。それぞれの国で、密入国業者を頼り右も左も分からぬままに次の国へと渡ってゆく。ある時はバスで、ある時はトラックの荷台で、ある時は徒歩で。
エンディングロールの前に、こんな字幕が出た。
「主役を演じた少年は、難民保護法の適用が受けられず、18歳の誕生日に本国に送還されることになっている」
ジャマールは本名であり、彼は実際の難民だったのだ。
この映画は実話を元にしている。実際にはアフガン難民でなく、中国人密入国者58人が貨物コンテナの中で死亡した事件がベースなのだが、それは2000年、たった7年前のことなのだ。
僕らの世代でいうアフガン難民とは、1979年の旧ソビエト連邦のアフガン侵攻によって生じたものと理解している。1990年代には500万人以上が難民として隣国に流出している。アフガン紛争は1992年に終結したものの、アフガンの経済基盤、インフラは国連や国際社会の援助を受けてもなお、その国民を維持することができるはずもなく、難民数は漸減するに留まっていた。そこへもって、2001年の同時多発テロの報復としてアフガンへの攻撃があり、再び難民が増加する結果となった。
現在、世界中で約1500万人の難民がいると言われている。これは東京都民1200万人よりも多い。そして、戦禍によって取り残されるのは女性と子供達だ。
そんな現実を理解したうえで、この作品を観てもらいたい。淡々と進んでゆくストーリーの中に、多分何かを感じ取れると思う。