1968年の作品。原作はアーサー=C=クラーク。
誰もが楽しめる映画ではない。特に女性にとってはあまり魅力を感じられないテーマかもしれない。テンポも遅いので、じれったく退屈に思う人もいるかもしれない。
本作品はスタンリー=キューブリックのSF3部作のひとつであり、彼の『映画』に対するこだわりを十分に堪能させてくれる。(他2作「博士の異常な愛情/または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」「時計仕掛けのオレンジ」)
メインの舞台は題名どおり2001年であるが、400万年前の人類がまだ知性を獲得する前の描写から始まり、2001年の月面、そして木星へ向かう宇宙船、さらに本作中最も意義深い異次元場面へと移行する。
象徴として、手がかりとして、本作中にまさに埋め込まれているのは『モノリス』。これが何を意味するのかは、作品を観て判断してもらいたい。また、原作を一読してから本作を見るのも一つの正しい手順かもしれない。
作中に効果的に使われる楽曲は、リチャード=シュトラウスの「ツァラトゥストラかく語りき」の冒頭部分とヨハン=シュトラウスの「美しく青きドナウ」である。
これらの楽曲が、人類の誕生と宇宙の広大さ、神秘的な雰囲気を見事に増幅させている。
原人の演技、宇宙船内の女性の演技など、少々不満な部分もあり、また、HAL9000がなぜ反乱を起こしたか、そもそもその設定を組み込む必要があったのかという疑問もあるが、それらも含めてこの時代の作品としては抜きん出ており、この映像美と楽曲の組み合わせには感服せざるを得ない。CGを全く使用せずにここまでの映像を撮れるとは。
40年前に、クラークが思い描き、キューブリックが観せた世界。新世紀を迎えた人類が到達しているであろうと期待した世界。
2006年、僕たちはまだこんな場所にいる。
薀蓄1:「ツァラトゥストラかく語りき」は、カラヤン/ウィーンフィルであった。(「美しく青きドナウ」はエンディングロールに指揮者/演奏者が載っているが、なぜかこちらは載っていない。)
薀蓄2:HAL9000(宇宙船のコンピューター)の名前は、IBMを一文字ずつ前にずらしたものと言われている。