イエス=キリスト(ジーザス=クライスト)の生涯を追った大作。
キリスト教に興味のある人は是非。
ただ、本作では神についての言及が少なく、イエスのみに焦点が当てられているので、聖書についても精読することをお勧めする。
足なえ、つまり足の不自由な人が歩くシーンなど、奇跡を起こすシーンには感動する。
ただ、これも「神に対するその人の信仰」がそうさせたのであり、イエスはそれを促しただけだということを忘れてはならない。
また、マグダラのマリアを赦すシーンにおいては、人が人を断罪することの愚かしさを学ぶことができる。
罪がその人にのみ帰属するものではなく、状況によっては自分もそうなり得るという意味で。
ただ、本作においてはイエスの傲慢さが少々浮き出してしまっている。本来のイエスはあくまでも「神(天の父)」の代理としての役割を果たしているに過ぎず、彼自身を主役にしたいとは願っていなかったように思う。
また、個人的には字幕の日本語訳に少々不満が残る。これは訳された時代によるものかもしれないが、特にイエスが聖書を引用する部分では文語訳聖書からのほうがしっくりくる。
口語では重みが失われてしまう気がするので。
以前からの疑問として、果たしてこの聖書というものが本当に「神」によるものかのかというものがある。
この作品を観ていても、イエスが例えば麻原彰晃のようではなかったか、彼との違いはその内容だけではなかったかと思えてしまう。
彼の行った奇跡とは、気持ちの持ち方を示したに過ぎないのではと。
その疑問が解決される日はおそらく来ないのだろうが、ともかくもこの作品はそういった様々なことを考えさせてくれるものだと思う。