1994年に起きたルワンダにおける大量虐殺を題材にした映画。
日本では興行収益の見込みから上映予定ではなかったが、有志の署名活動により公開が実現したと聞く。
支配者層である少数派のツチ族と被支配者層であるフツ族の対立により、フツ族がツチ族と親ツチ族派を虐殺した。
ここに至る過程には複雑なものがあり、旧宗主国であるベルギーやアフリカにおけるフランス語圏を守りたいフランスなどの諸外国、全く同じ人種であるにも拘わらず生じていたツチ族フツ族の貧富や階層の差、そして1973年のクーデターから続く内紛などがこの事態を引き起こした。
過去における大量虐殺の例に漏れず詳細な死亡者数は明らかではないが、凡そ80万から100万人が犠牲になったと言われる。
本作はこの混乱の最中において、弾圧する側のフツ族でありながらツチ族と親ツチ族派1268人を守った実在の人物ポール=ルセサバギナをメインに描く。
虐殺の映像がニュースで流れれば世界が必ず助けに来ると信じるポール。
しかしジャーナリストは言う。
「彼らは『怖いね』と言うだけでディナーを続ける。」
まさにその通りだ。
僕は傍観者であり、見物人であり、単なる視聴者に過ぎなかった。
できることはなかったと思うのは単なる逃避なのだろう。
そしてポールは自分の為すべきことをした。
自分の行為で自分が恥じることのないように。
惜しいことに主演ドン=チードルの瞳にはこの役を真実に近付けるだけの深みが足りなかったように思う。
本作はこういったことが世界では起こっているのだということ、そして日常生活においても自分を恥じぬよう生きることを教えてくれるものであり、映画としての完成度は問題にしてはならないものかもしれない。